演劇集団三色旗 楽屋裏

第一回:青く澄んだ空の下で邂逅す。
第二回:わたしのすきなひと
第三回:人生最大の苦悩



200X年某月某日。
埼玉県南部の某市某ファミリーレストランにて。
楽屋裏という名の座談会という形式の後書き。

七重「ごきげんよう、皆さん」
朱里「ごきげんよー!」
藍「こんな夜中に呼び出して‥‥非常識だっつーの」
白夜「こんばんは、座長さん」
七重「本日呼び出したのは他でもありません。いよいよ動き出したこの企画、『演劇集団三色旗』のメイン看板を張る女優の皆さんに、今回演じられた作品についてお話を聞きたいと思いまして」
藍「あんたの脚本で無理やりやらされた、あれ?」
朱里「あれー。あいちゃん、けっこう乗り気だったじゃん。不良生徒役とか」
藍「うっさい」
白夜「今のところ、確か三作公開されているんですよね?」
七重「ええ、そうです。ちょうど三人が、それぞれのパターンで出演しきったところなので、キリがよいと思いまして」
朱里「そういえば、わたしもあいちゃんと白夜さんと、やったな」
白夜「思ったよりも面白かったですよ?」
七重「そう言っていただけて幸いです」
藍「なんか、最後の作品だけ中身が他の二つの数倍あるけどね」
朱里「ボリューム満点だよねえ。わたし、出てなかったけど」
七重「あはは。次の機会を楽しみにしておいてください」
白夜「それで座長さん、この座談会はどういう仕組みで進めるんです?」
七重「とりあえず、各作品ごとに演じられた皆さんに感想を聞いてみたいと思います。ではまずは、第一回公演『青く澄んだ空の下で邂逅す。』からですね」

●青く澄んだ空の下で邂逅す。=本編
――第一回公演/5月23日初演

七重「いわゆる、記念すべき第一回というやつですね」
藍「ほとんどその場のノリだったくせに何を言うのやら」
朱里「これに出てるのは、わたしと藍ちゃんだよね‥‥?」
七重「ええ、まあそうなんですが、読んでいただければ判るように、これには登場人物の名が一切出てきません」
朱里「そうそう。最初びっくりしたよ」
藍「おかげで、誰がやってるのかも判らない。あとから適当に設定したんじゃないの?」
七重「その通りですけど、あんまり気にしないでくださいよ」
藍「案外正直なのね‥‥」
七重「ごまかすだけの技量もないので。それより、これはどうでした? じゃあまず、朱里さんから」
朱里「なんとなく物足りない感じがしたかな?」
七重「それは言われると思ってました」
藍「百合だってあれだけ豪語してた割に、あなたの書くのって、なんかそういうの多いよね」
七重「ごもっともです」
朱里「終わりかた見れば、なんか続きそうだなって思うけど、これは?」
七重「今のところはそんなつもりはないですね」
藍「断言しやがったよ」
朱里「そっか、残念。でも、これから色んな触れ合いとかありそうだよね」
七重「最近流行ってる、『学校がつまらない』という意見を持ってサボタージュする女の子に、学園生活を輝かせる研磨剤を与えた、ってところです」
藍「研磨剤ねえ。そりゃ、楽しくなるかもしれないけど」
七重「ええ。でも本来、学校ってのは自分から楽しくするところですよね。受動的になってて何ができるわけでもない。だから、あとは彼女次第ってわけです」
朱里「へえ〜。思ったよりいいこと言うじゃん」
七重「経験者は語る、ってやつです」
藍「後悔先に立たず、ってやつね」
七重「それは言わないでくださいよ。‥‥では、藍さんはどうでした? この作品は?」
藍「これを物語のプロローグとして捉えるなら、意見のいいようがない。完結した一つの作品として捉えるなら、椎葉に同じ」
七重「ありゃ‥‥あっけないですね」
藍「この作品ほどじゃないわ」

●わたしのすきなひと=本編
――第二回公演/5月23日初演

七重「さて。これは奈良原白夜さんの初登場であるわけですが」
白夜「お母さん役なんて思わなかった」
七重「‥‥失礼しました」
朱里「確かに、白夜さん、お母さんにしては若すぎるもんね。でも、白夜さんみたいなお母さんなら欲しいな」
白夜「あら、喜んでいいのかな?」
七重「この作品、母娘の話として捉えると、どうしても希薄であるという印象が強いみたいですね」
白夜「関係が母と娘でなくても、お話は普通に展開できるところなんかがそう評価できますよ」
朱里「でもでも、こんな親子だからこそいい、って見方もアリだよね?」
七重「もちろんです。これが親子であるところに意味があると思っていただいて」
白夜「けど、こんなにお母さんが若いのには、やっぱり理由があるのでしょう?」
七重「まあ一応、14歳で子供を生んだっていう設定は考えましたけど、特に必要ないと思って入れませんでした」
朱里「あ、もしかして、『特殊な環境』っていうのは‥‥」
七重「そういうことですね。高校生の年齢で子育てをしなきゃならないから、同年代の友達ができにくかったんです」
白夜「だから余計に、娘にぞっこんなのね」
七重「はい」
朱里「でも、いいなあ。こんなお母さん、欲しいなあ‥‥」
白夜「百合がお好きな座長さんとしての、これは憧れですか?」
七重「どっちかというと、羨望に近いですけどね。理想とか」
白夜「これで親子関係が実は義理だった、なんてことになったら、まるっきり美少女ゲームですよね」
朱里「え? それだったら、あっくんは白夜さんとらぶらぶになれるの?」
七重「なんというか、ギャルゲーのフォーマットを百合に転用することは、してみたいと思ってます」
白夜「ところで、これは、親子関係であるっていうのはオチなんですか?」
七重「そうですね。結果として。でも、そこまで重要な話題ではないので、驚いてもらわなくてもいいんです」
朱里「わたしはびっくりしたよ」
七重「それは何より」

●人生最大の苦悩=本編
――第三回公演/6月4日初演

七重「さて、では今回の最後になります。第三回公演『人生最大の苦悩』――ご感想は?」
藍「直球」
七重「それを狙いましたからね」
白夜「これはつまり、そういう百合を書こうとして書かれたということ?」
七重「――ですね。第一回の公演の感想のときに藍さんにも言われましたけど、私の書く百合って、どうにも『物足りない感』が強いようです。女の子同士の恋愛としては」
藍「友情と愛情のはざまにあるような微妙な関係も、あなたの中では百合に入るんでしょ?」
七重「もちろんです。でもだからこそ、たまにはこういう百合を書きたくなるわけです」
白夜「このお話、あいちゃんの視点からの一人称ですけど、ずいぶんと――なっちゃんに対しての感情がぶつかってきてますね」
藍「しつこいくらいにね」
七重「実際しつこいって言われましたし」
白夜「それには満足してるの? 書き手としては」
七重「どうでしょう‥‥微妙ですね。こういう、美少女を美少女として読者に認識させるための美少女表現というのは、一つの挑戦でした」
藍「大学生だけどね。美少女って‥‥」
七重「過剰だと思われるくらいぐだぐだ書き並べることで、あいちゃんのなっちゃんに対する意識の強さってものに気付いてもらえれば充分です」
白夜「なるほど」
七重「ただ一つ‥‥こういう表現に慣れてないせいだと思うんですが、ボキャブラリーが足りなくて焦りました。特に後半」
藍「確かにね。似たような表現のしかたばっかりだったかも」
七重「現実にいる――でなくとも、二次元のキャラであっても、ですが、とにかくビジュアルとして表現される人物の麗しさというのを文章で表現するのは、何とも難しいものです」
藍「こういう場合は、他の小説とかから表現をパクるのが一番なのかもね」
七重「そうかもしれません。まあ、パクるとはいかないまでも、参考にする程度には」
白夜「文体まで影響されないように、気をつけてくださいね」
七重「はい。善処します」

●総評

朱里「まだまだこれからだよね、きっと」
七重「全くです。こうして三つ並べてみると、第一回や第二回がまったく百合に見えません」
白夜「座長なりの百合表現を探していくのも大事ですよね」
七重「自分が一番得意なやりかたを見つけられたら、この三色旗を始めた意味があるというものです」
藍「いろいろ書いてみることね。いろいろ」
七重「百合といっても千差万別ですからね。エッチなシーンが苦手だからって逃げていてはいけないってわけでしょう」
朱里「えっ‥‥エッチなことやらされるの?」
七重「せいぜい深夜ドラマのラブシーン程度ですから、そんな心配はいりませんよ」
藍「それはそれでイヤだな、なんか‥‥」
白夜「とにかく、今後も楽しみにしてますよ。どんな作品を書かれるのか」
七重「期待に沿えるように頑張ります」
朱里「じゃ、今回の対談はここまで。みんな、これからもよろしくね。さよーならー」



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