ショートショート『ドラクエU劇場』(文字数1488) |
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舞台 ドラゴンクエストU 登場人物 ロラン(ローレシア王女)|サトリ(サマルトリア王女)|ルーナ(ムーンブルク王女) |
-*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 1.ラーの鏡(サトリ視点) 「これで元に戻れるよ、ルーナ」 怯えた表情でぼくが持ったラーの鏡を見つめる子犬の頭を、優しく撫でる。 もはや確実だ。この犬は、ルーナだ。ムーンブルクの麗しき姫。 「わん」 頭を撫でられた子犬も、くすぐったそうにそう鳴いた。心なしか、嬉しそうだ。 「なあ、サトリ」 ぼくの後ろに立っていた黒髪短髪の少女が、苦しそうに声を出した。 「どうしたの、ロラン?」 「早くしてくれねえか。オレ、腹減ったよ」 「はしたないよ‥‥」 一応女の子なのに、そんな。 何か解決法がないかな、なんて考えながら足元に擦り寄ってくる子犬を撫で、 「あ」 「なんだよ」 「わん?」 突然声をあげた。ロランと子犬が二人揃ってじっと見つめてくるのへ、 「犬食なんてどうかな」 「わん!?」 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 2.風のマント(ロラン視点) 「こりゃ凄いな」 ため息混じりに足元を見下ろした。 ドラゴンの角の最上階。 かつて橋が架かっていたというその場所は、今や何もない。 気が遠くなるような深さの絶壁を越えた向こうにある姉妹塔が、オレたちの到着を待っている。 ようにはとても見えないくらい、強烈な風が吹いている。 「これを渡るの‥‥」 サトリが怯えた声を出す。 気持ちも判らんでもない。というか、怖い。怖すぎる、これは。 「あれを使えば上手くいくのよね」 ルーナが取り繕うようにそう言うけれど、こりゃ自信も無くなるっての。 「まあ、どっちにしろ、行くしかねえって」 「ほ、ホントに?」 「今さら渋っても仕方ないだろ。これ越えなきゃ先進まねぇんだからよ」 仲間内の誰か一人が怯えていれば、こっちは逆に冷静になれる。 そういう意味で、戦闘以外じゃ未だにのん気で怖がりのサトリという少女は、ありがたかった。 そんな様子を、ルーナは苦笑交じりで眺めている。この女には怖いとかそういう感情がないのか。 「犬になるよりマシよ」 「ごめんなさい」 にっこりと後光が差すような笑顔でそう言われてしまっては、オレとサトリに勝つ術はない。 「さて、じゃあ、行くとしますか」 「うう‥‥」 「犬になったつもりで飛ぶといいわ、サトリ」 三者三様の、かみ合っていない会話。 まあ、これもこのパーティの味ってやつだ。 「広げるぞ。‥‥よし、これでいいか。行くぞ、せーの」 「あっ!」 飛ぶ瞬間。 サトリが悲鳴みたいな大声をあげた。 けれど次の刹那には、既に三人の身体は仲良く空中へ。 「なんだよサトリ、驚かすなよ」 「い、いや、でも‥‥」 サトリが怯えて見つめる方向にルーナがふと目をやり、 「穴が空いてる」 -*-*-*-*-*-*-*-*-*-*- 3.世界中の葉(ルーナ視点) 「ったく」 ロランがあからさまにため息をつく。 この子、思慮が足りない割にため息ばかりだ。 「ごめん」 布団で顔を隠して、目だけちらりと出した姿で、サトリが謝る。 正直、可愛い。 「まあまあ、いいじゃない」 これもハーゴンの仕業なのだとしたら、いよいよ敵はこちらを認識してきたというわけで。 わたしは、自分を犬にしたアホ神官をいつブチのめせるのかと、内心わくわくしているのだ。 「じゃあ、ちょっと寝てろよ。オレらで色々調べてみるからさ」 「ごめんね、ロラン、ルーナ‥‥」 「弱気な声出すんじゃねぇよ」 長い間男の子として育てられてきただけあって、ロランの口ぶりは男っぽい。 セリフだけじゃ男か女か判らないくらいだ。 そんなロランは、ぶっきらぼうにそう言うと、さっさと部屋を出て行ってしまった。 残されたわたしも、ロランの後をついていこうと椅子から立ち上がり、 「ねえ、ルーナ」 弱弱しくわたしを呼ぶ声に立ち止まった。 「なに、サトリ?」 「うん。えっと、その‥‥」 最近、戦いをたくさん積んでかっこよくなった。 なんて、女の子に言うのは褒め言葉じゃないかもしれないけど。 そんなサトリがこんなふうになよっとしていると、昔のことを思い出す。 「ぼくなんか、置いていってくれてもいいのに。どうして助けてくれるの?」 「‥‥」 なんでそんなことを言うのだろう。 わたしはぽかんとサトリを見つめた。 「なんで?」 「え?」 「なんでそんなこと言うの。あたしたち、そんなに冷たい仲だった?」 「ルーナ‥‥」 無意識のうちに言葉に怒気が含まれていたらしくて、サトリが怯えた表情をする。 それを見たわたしの頬が緩む。 「いいわ、話してあげる。一度しか言わないから、ちゃんと聞いてね」 「うん」 真剣な顔で頷くサトリに、わたしは言った。 「イベントが先に進まないから」 「イベント?」 「フラグ立たないし」 「フラグ!?」 |